パレスチナ「挙国内閣」交渉を延期 ファタハとハマス衝突 3日間で死者21人  【エルサレム=三井美奈】パレスチナ自治区ガザ地区で27日、内閣を主導するイスラム原理主義組織ハマスと、アッバス議長率いるファタハ両派が各地で銃撃戦を展開し、計4人が死亡した。両派は25日夜以降、ガザ地区各地で衝突を続け、3日間の死者は計21人に達しており、アッバス議長が昨年12月に評議会(国会)選挙の前倒し実施を発表して以降、最悪の事態となった。両派は26日、予定されていた「挙国一致内閣」樹立に向けた交渉の延期を決め、再び緊張が高まっている。  両派の衝突は25日、ハマスの車列付近で仕掛け爆弾が爆発し、2人が死亡したのを機に始まった。ハマスは26日、ファタハ幹部を「爆発の首謀者」と名指しし、ガザ北部にある幹部宅を包囲。両派の銃撃戦となり、ハマスの2人が死亡した。ガザ市内にあるザハル外相の自宅が迫撃砲攻撃を受けたほか、アッバス議長の自宅も銃撃されるなど、各地で交戦。ガザ中部ハンユニスでは26日、車に乗っていた2歳の幼児が銃撃にあい死亡した。  さらに、27日には、ハマス色の強いイスラム大学付近で銃撃戦により学生ら2人が死亡したほか、ファタハ系の治安部隊本部でも戦闘があり、事態収拾のメドは立っていない。  ガザ市の住民によると、市中心部では27日、商店の多くがシャッターを閉ざし、発砲音があちこちで聞こえるという。  ハマス報道官は26日、「ファタハは『殺し屋』をかくまっている」と主張。ファタハ報道官も「責任はハマスにある。連中は本音では、組閣交渉よりもファタハ攻撃をしたいのだ」と応じた。  両派の衝突は、評議会選挙の前倒し実施が発表されてから、断続的に続いていた。  ただ、議長とハマス最高幹部メシャル氏は今月21日にシリアで会談し、欧米の援助再開を目指して「挙国一致内閣」に向けた交渉の再開で合意し、歩みよりの姿勢を示していた。その数日後の衝突再発だけに、両派指導部が末端の武装メンバーを統御できなくなった事態を浮き彫りにするとともに、両派は双方とも態度を硬化させたことで、交渉再開はより困難になったとも言える。  議長は26日、訪問先のスイス・ダボスで、「組閣交渉は2、3週間に限定すべき」と主張。交渉がまとまらない場合、評議会選を強行する方針を再確認し、ハマスに譲歩を迫った。  議長による選挙実施の発表後、両派の衝突による死者は約50人にのぼる。  写真=ガザ地区で26日、昨年1月のパレスチナ評議会選での勝利を記念して街頭に集まるハマス支持者(AP)