愛知知事選、32年ぶり与野党対決 夏にらみ総力戦 トヨタ票、鈍い動き  ◆団体回り、大物投入 両陣営注視のトヨタ票、鈍い動き  愛知県知事選(2月4日投開票)は、民主党が初めて同選で自民党との相乗りをやめ、32年ぶりに与野党対決の構図となった。党本部の「与野党相乗り禁止」方針を受けたものだ。統一地方選、参院選の前哨戦として、各党は総力戦を展開している。(政治部 小林弘平、中部社会部 金成真也)  自民党は「冬の天王山」(中川幹事長)と位置づけ、複数の国会議員を連日投入するなど、手厚い支援態勢を組んでいる。「民主王国」愛知県の知事選で勝利すれば、参院選へ向けて大きな弾みとなるからだ。  愛知入りした議員は、企業や各種団体に提出させた名簿を手に、系列や取引会社、関連団体を回る。  茂木敏充筆頭副幹事長も23日夕、トヨタ自動車と取引のある豊橋市の機械メーカーを訪ね、「愛知県知事選、統一地方選、参院選という『ホップ・ステップ・ジャンプ』の『ホップ』でつまずく訳にはいかない」と、社長に頭を下げた。  神田氏にとって「追い風」は好調な地域経済だ。愛知県は今年度から、東京都に次いで地方交付税の不交付団体となった。県内市町村の不交付団体数36も、都道府県別で全国最多だ。  「愛知は今とても元気だ。8年前に知事を引き受けた時は(県財政が)2年連続の赤字決算という最悪の状態だった」  神田氏は27日の犬山市内での集会で、地域経済の好調さと自らの行政手腕を誇ってみせた。  ただ、昨年11月の福岡市長選、今月の山梨県知事選など現職の敗退が相次いでいるだけに、陣営幹部は「甘く見ていると、取り返しのつかないことになる」と引き締めに躍起だ。  神田、石田両陣営が注視するのは、愛知県内に多数の従業員や関連企業を抱えるトヨタ(本社・豊田市)の動きだ。「30~40万票」とも言われるトヨタ票の動向は、選挙結果に大きな影響を与える。  昨年12月末、自民党の大村秀章県連会長らはトヨタ本社を訪れ、木下光男副社長らに「知事選でも衆院選同様の神風が起きるぐらいの全面的支援が欲しい」と直談判した。  だが、トヨタは慎重な姿勢を崩していない。  2005年衆院選で、経営側は自民候補、組合側は民主候補を支援し、「労使関係に深刻な亀裂を生じ、選挙後も修復は大変だった」(トヨタ労組関係者)ためだ。自民党県連幹部は「今回は経営側も組合も選挙支援はほどほどにという紳士協定ができている」と見る。  民主党も「参院選で自公を過半数割れに追い込むため、絶対勝たなければならない戦いだ」(鳩山幹事長)と位置づける。18日の石田氏の出陣式には小沢代表、菅代表代行、鳩山氏がそろって駆けつけた。  ただ、最大の支援団体・連合愛知の動きは今ひとつ鈍いとの指摘がある。過去2回の知事選で神田氏を推薦した経緯から、民主党の相乗り禁止方針に「石田氏を推薦する理由が分かりにくい」と戸惑いも見られる。  民主党や石田陣営が重点を置くのが無党派層対策だ。宮崎県知事選で元タレントの東国原英夫氏が当選したこともあり、「変化」や「脱しがらみ」を強調する作戦に出ている。  石田氏も27日の名古屋市守山区での街頭演説で、「万博はもう終わった。いつまでも実績と言っていては駄目だ。地方から国を変える。私なら改革できる」と訴えた。  ◇神田真秋(かんだ・まさあき) 55無現  〈自〉〈公〉知事  ◇阿部精六(あべ・せいろく) 67無新  〈共〉元愛労連議長  ◇石田芳弘(いしだ・よしひろ) 61無新  〈民〉〈社〉〈国〉前犬山市長  (届け出順。年齢は投票日現在。〈 〉は推薦政党)  写真=支援者らと一緒に気勢をあげる愛知県知事選候補者(27日、愛知県犬山市で)