[知事交代](5)失態重ねた民主 支持層まとめきれず(連載)=山梨  知事選の投開票が行われた21日夜、山本栄彦氏の事務所に駆けつけた民主党県連の小沢鋭仁代表は取り囲んだ報道陣に対し、「民主党は一丸となって戦った」と言葉少なに語った。山本氏の敗戦の弁を聞き終えると、人目を避けるように樋口雄一幹事長に近付き、そっと封筒を手渡した。  「辞めたいと思う」。中には県連代表の辞任届が入っていた。  知事選を通し、民主党県連は3度失態を演じたと言われている。まず、独自候補を擁立しなかったことだ。昨年7月の滋賀知事選で自民、公明、民主の推薦した現職候補が敗れると、民主党本部は知事選で与党との相乗り禁止の方針を打ち出した。県連でも独自候補を模索し、一時は小沢氏などの名前も浮上した。しかし、支援組織の連合山梨が山本氏推薦を決めると、最終的に歩調を合わせた。  読売新聞の世論調査で民主党支持層のうち「独自候補」を求めたのは64%に達した。選挙後、民主党県連の竹越久高代表代行も「民主党議員の少ない地方で独自候補の擁立は困難だ」と強調したが、「政党としては基本的に候補の擁立があるべきだ」と肩を落とした。  12月19日に党本部で開かれた知事選前の最後の常任幹事会では、県連が山本氏の党本部推薦を申請していたのに、山梨県知事選は議題にすら上らなかった。「相乗り禁止がネックとなった」(小沢氏)。党本部推薦は見送られた。「存在感が低下」(幹部)し、失態を重ねた。  そして、県連推薦で突入した選挙戦は“敗戦”。山本氏の選挙事務所に集まった県連幹部らは「準備が遅かった」「イメージに敗れた」などと選挙戦術などの敗因を口にした。しかし、読売新聞の出口調査では、民主党支持層が山本氏と横内正明氏に投票した割合は拮抗(きつこう)した。支持層をまとめきれていなかったと言え、4月の統一地方選、7月の参院選への影響が懸念される。  県議選で掲げた目標は現有3議席からの倍増だ。小沢氏の辞意表明に、県議の1人は「後任人事に時間をさいている場合じゃない。県議選をやって責任を果たしてからにしてほしい」と、いらだちを隠しきれない。  参院選では昨年8月に早々と擁立した元民放記者の米長晴信氏が、知事選で自民党県議団が分裂し、候補者選びが難航するのを尻目に着々と準備を進める。後藤斎衆院議員も「国政選挙と知事選は違う。(知事選の結果は参院選に)直結はしない」と語る。  しかし、連合山梨幹部は「向こうは分裂しても、アメーバのようにいずれくっつく。気を引き締めないとやられる」と苦言を呈す。(この連載は、横溝崇、新美舞、安江邦彦が担当しました)  写真=山本氏の落選が濃厚となり、渋い表情で記者団の質問に答える民主党県連の小沢鋭仁代表(21日夜、甲府市内の山本事務所で)