[社説]代表質問 民主党は説得力ある対案を示せ  民主党の小沢代表が、代表質問で安倍首相に論戦を挑んだ。夏の参院選への主要な論点が浮かびあがったのではないか。大いに議論を深めるべきだ。  小沢代表は、冒頭、政治がなすべきは、首相が強調している「憲法改正」か、国民生活を立て直し、一新する「生活維新」かと訴えた。  安倍政権との違いを示すための小沢代表流の論法だろう。だが、小沢代表自身、憲法改正は大事な課題との認識を示している。憲法改正も国民生活の立て直しも、いずれも取り組むべき課題である。二者択一を迫る問題ではない。  小沢代表が最重要課題と位置づけたのは、格差の是正だ。小泉、安倍両政権で、日本が「世界で最も格差のある国」になったからだと主張している。  政府は再チャレンジ支援としてパート労働者の待遇改善など労働関連法案を国会に提出する。民主党は、「格差是正緊急措置法案」(仮称)を提出して政府に対抗する方針だ。格差をどういう手順、手法で是正するのか、その具体策を早急に明らかにすべきである。  小沢代表は、社会保障の財源問題で、消費税を現行税率のまま、全額年金財源(基礎部分)に充てると述べた。年金の基礎部分をまかなうため、消費税率3%引き上げが必要とする民主党の従来の主張からの転換である。  その理由として、小泉、安倍両政権で国民負担が消費税率に換算すると3・5%も増えたとの試算を示し、消費税率を上げるべきではないとしている。  しかし、増税なしで、今後も増え続ける年金給付に対応できるのか、説得力ある説明にはなっていない。  農業政策では、兼業農家も含む全農家に対し、「戸別所得補償制度」を導入することを提案した。農家の生産費と市場価格との間に差額が生じた場合、不足分を全農家に直接支払うものだ。これでは、農業の体質強化にならず、非効率な現状を固定化するだけではないのか。  改革実現の財源を確保するため、小沢代表は補助金、交付税を地方に一括交付し、特殊法人、独立行政法人を原則廃止するという。それなら、具体的な手だても示してもらいたい。  小沢代表は、政治とカネの問題に言及し、事務所費の問題が解決されなければ「まともな論戦を始めることができない」と述べたが、どういうことか。  無論、政治への信頼確保のため、疑惑を解明し、政治資金の透明性を高めることは大事だ。それ以上に有権者が求めているのは、山積する重要な政策課題の解決を巡る論議だろう。