「消費税」から逃げるな 今国会、選択肢示す格好の場  国会は衆院本会議での代表質問で論戦の幕を開けたが、早くも「スキャンダル国会」の様相を呈している。一方、政策論争は空転の兆しが出ている。安定的な社会保障制度に消費税率引き上げによる財源確保が不可欠であるにもかかわらず、与野党が夏の参院選を控え、消費税論議を「封印」しているからだ。  参院選は今年最大の政治決戦となる。少子高齢化が進む中、社会保障制度をどのように維持し、財源をどこに求めるのか、は大きなテーマだ。今国会は、与野党が国民に選択肢を示す格好の場となる。  しかし、現状はどうだろう。最近、事務所費のあり方などの問題が相次いで浮上した。野党は松岡農相らの問題を徹底追及する構えを見せている。与党も、民主党の小沢代表の資金管理団体が高額な不動産を事務所費で取得していた是非などを取り上げる方針だ。  政治とカネの問題は、政治の信頼性を確保する観点から重要だ。制度の不備を改める必要がある。懸念するのは、敵失をあげつらう泥仕合に陥ることだ。  代表質問で、民主党の小沢代表は社会保障制度改革で「消費税を引き上げることは多くの国民の家計を破たんさせ、格差をさらに拡大させる」と強調し、今の消費税を基礎年金の財源に充てる案を提案した。  安倍首相は「財源、財政に深刻な影響を与える恐れがある」と反論したが、首相も「筋肉質の政府の実現を目指す」などとするだけで具体像を示していない。  選挙前、国民に痛みを求めるテーマを避けたいのだろうが、議論は空々しいものに聞こえる。与党内には「消費税論議は参院選後の秋から」と、既定路線のように語られている。有権者に対して不誠実だ。  国会は残り145日あると言っても、4月の統一地方選挙が迫れば、国会は「休戦状態」となる上、参院選のため会期の延長もない方向だ。議論の時間は限られている。  昨年10月の読売新聞社の全国世論調査では、社会保障制度維持のために消費税引き上げはやむを得ないと考える人は49・4%で、「そうは思わない」と考える人の48・8%と拮抗(きっこう)した。正面から議論する機は熟していることが分かる。このまま「消費税隠し」が続けば、社会保障制度改革への現実的かつ具体的な選択肢が示されないまま、参院選を迎える。与野党は消費税論議から逃げるべきではない。(吉山隆晴)