厚木市長選で現職落選 自民、戦略練り直し 知事選は「街頭」に力=神奈川  ◆統一選目前   統一地方選の前哨戦として注目された厚木市長選は、4選を目指す現職の山口巖雄氏(64)が前県議の小林常良氏(57)に大差で敗れ、山口氏を推薦した自民党県連に衝撃が走った。争点となった「多選」を巡り、小林氏が早くも禁止条例制定を目指すと明言する一方、自民党は選挙戦略を見直し始めるなど、地方選を巡る動きは加速しそうだ。  「惨敗だ。戦略を考え直さなければならない」。自民党県連の斎藤達也幹事長は、苦渋の表情でこう語った。  県連は、前自民県議だった小林氏ではなく、実績を評価して、あえて多選批判の出ていた山口氏の推薦を決めた。選挙結果は、その判断が問われることに。  敗因について、斎藤幹事長は「政党がついていない方がいいという流れが出てきている。(小林氏は)街頭演説一本で戦った」と分析。既成政党への不信感に加え、街頭演説に力を入れた小林氏が、政党のしがらみを嫌う無党派層への浸透に成功したとみる。  県連は統一地方選の目玉となる県知事選に、前埼玉高速鉄道社長の杉野正氏(48)を推薦している。杉野氏はこれまで、自民県議らとの会合に出席するなど、組織固めに力を入れているが、斎藤幹事長は「今後は街頭にも力を入れる」と述べ、無党派層対策に力点を置いた選挙戦に転換する考えを示した。  宮崎県知事選では、政党の支援を受けない東国原英夫氏が当選し、有権者の目には「組織」が「しがらみ」につながるとする見方もある。別の自民県議は「組織ではなく、(杉野氏の)キャラクターや政策を前面に押し出すようにした方がいい」と話し、政党色を薄めた選挙戦に切り替えるべきとしている。  一方、民主党の若手議員は「小泉流のワンフレーズ・ポリティクスで勝った」と語り、小泉前首相のスタイルで、小林氏が「多選阻止」を繰り返したことが奏功したとの見方を示した。  ◆「政党不信の流れ底辺に」松沢知事   厚木市長選で、新人の小林氏が、自民、公明推薦で4期目を目指した現職を破って当選したことについて、松沢知事は29日、記者団に対し、「(宮崎県知事選も含め)政党不信という流れが底辺にある」との見方を示した。  先月の県議会で条例化を巡り議論となった多選禁止が、選挙戦の争点となったことについては、「有権者がやっぱり多選は好ましくないと判断されたと思う」と述べた。  ただ、「他の自治体に影響するという見方は早計」とも語り、条例などでのルール化は、各自治体で実情に応じて必要性を判断すべきだとした。  ◆「任期は3期12年まで」 小林氏、条例制定の考え 当選会見で  初当選を果たした小林氏は、一夜明けた29日、市役所内で記者会見し、市長の任期を3期12年までとする多選禁止条例を制定する考えを明らかにした。  当選証書付与式を終えた小林氏は「責任の重さを痛感している。英知を出し合って取り組んでいきたい」と抱負を語り、現職の山口氏に1万票余りの差をつけたことについて、「市民が『多選を変えたい』と思っていた。草の根選挙を行ったことが、有権者に理解しやすかったのかもしれない」と分析した。  争点となった「多選」については、多選禁止条例の制定を目指し、「市長は3期12年まで」と明言。統一地方選には「少なからず影響すると思う」と述べた。  任期は2月23日から。  写真=1期目へ向けた抱負を語る小林氏