柳沢氏発言 政府・与党、対応に苦慮 野党は強硬姿勢強める  柳沢厚生労働相が女性を「子供を産む機械」に例えた問題への対応に、政府・与党が苦慮している。厚労相の発言の非は明らかなだけに、辞任を求め、国会での審議拒否も辞さない強気の野党に、有効な反論ができないままだ。昨年末には佐田玄一郎・前行政改革相も辞任に追い込まれているだけに、厚労相辞任となれば安倍政権には深刻な打撃となるのは間違いない。〈本文記事1面〉  30日の野党党首会談では、民主党の小沢代表が最も強硬だった。小沢氏は「発言は常軌を逸している。私たちが強硬に出ても、世論の反発は招かないだろう」と述べ、辞任まで予算案の審議拒否を続ける意向を示した。社民党の福島党首、国民新党の綿貫代表も同調した。  民主党は、同党出身の角田義一参院副議長が政治献金の不記載問題で辞任に追い込まれたばかり。小沢氏は、厚労相発言への世論の反発が思った以上に強いのを見て、「国会運営の主導権を取り戻す絶好の機会だ」(周辺)と判断したようだ。  31日には、民主党の松本政調会長らが東京・有楽町で街頭演説し、厚労相発言の問題点を訴える方針だ。社民党の福島党首や民主党の円より子、共産党の吉川春子両参院議員ら、女性を中心とした野党の有志議員も、国会内で柳沢氏の辞任を求める集会を開く。  これに対し、政府・与党は現時点では、辞任要求を拒んでいる。安倍首相も30日夜、首相官邸で記者団に、「女性を傷つけたことは柳沢氏も反省している。職責を果たし、国民の信頼を得るよう努力してもらいたい」と強調した。公明党幹部も同日夕、「発言直後に謝っている。罷免するほどではない」と語った。  政府・与党が擁護の姿勢を崩さないのは、「柳沢氏が辞任したら、今度こそ首相の任命責任が避けられない」(公明党幹部)という判断からだ。ただ、柳沢氏への反発は続いており、高市少子化相も29日、記者団を前に、「私は子供がほぼ授かれない体なので、機械だったら不良品ということになる」と不快感をあらわにしたほどだ。  衆院予算委では、31日に2006年度補正予算案と07年度予算案の提案理由説明を行い、1日に実質審議に入る予定だ。与党は野党が欠席しても審議を進める方針だが、国会の混乱が続けば、批判はさらに強まることになりそうだ。      ◇  ◆柳沢厚労相発言の要旨  人口統計学では、女性は15歳から50歳までが出産をしてくださる年齢だ。2030年に30歳になる人を考えると、今、7、8歳だ。もう、生まれてしまっている。産む機械と言ってはなんだが、装置が、もう数が決まってしまった。機械と言っては、本当に申し訳ないんだけども。機械って言ってごめんなさい。その産む役目の人が、ひとり頭(何人産むということ)で頑張ってもらうしかない。(27日、松江市の講演で)  写真=塩崎官房長官に厚労相辞任を申し入れた後、記者の質問に答える小沢民主党代表(中央)、福島社民党党首(左)、綿貫国民新党代表(右)の野党3党党首(30日午後、首相官邸で)