[ひと]北方領土「分け合う」解決案を提示 北海道大学教授・岩下明裕さん  政治や経済などの優れた論考に贈られる第6回大佛次郎論壇賞(朝日新聞社主催)に、岩下明裕・北海道大学教授=写真=の著書『北方領土問題』(中公新書)が選ばれ、このほど都内で贈呈式が行われた。  本書は、北方領土問題と同じく長年、事態が進展しなかった中国とロシアの国境問題が2004年に解決した経緯を参照しながら、その手法を日露間に応用する道を探った。係争地を互いに「分け合う」という、政治的妥協に至る道筋を検討している。  副題は「4でも0でも、2でもなく」。4島返還を目指す日本と2島返還を基本とするロシアの間で、排他的経済水域の拡大や3島返還などを視野に入れた「2島プラスα(アルファ)」の可能性を探っている。  贈呈式では、選考委員の佐々木毅・学習院大学教授が「これまで考えもしなかった国境・領土をめぐる問題解決のドラマをたっぷりと味わわせていただいた。知的興奮を覚える作品だ」と選考の経過を報告した。  あいさつに立った岩下教授は「この本では、係争になっているものを分け合い、フィフティー・フィフティーでお互いの利益を考慮して解決しましょうと書いた。政府の一括返還とは違う。だが、政治家で似た発言をする人が出てきて、関係あるように誤解されてしまった」と語り、政治と密接にかかわりあう、難しい問題ならではの騒動を紹介した。  また、「フィフティー・フィフティーですから、賞金の半分は(北方領土問題の地元である)北海道根室市に寄付したい。国境地域の体力をつけるようなことに使ってほしい」と発表。残り半分は家族で協議した結果、妻と母に半分ずつ贈ることになったといい、「私の取り分はゼロ。ゼロに戻り、また同等の賞を取って、今度は独り占めしたい」と会場を沸かせた。