◆別大マラソン4日号砲 2人のアツシいざ激突  陸上の世界選手権大阪大会(読売新聞社など協賛)の男子代表選考会となる別府大分毎日マラソン(2月4日)で、佐藤敦之(中国電力)と藤田敦史(富士通)の初のマラソン対決が実現する。2003年世界選手権代表の佐藤と、1999年と01年の世界選手権代表で前日本記録(2時間6分51秒)保持者の藤田。佐藤は早大、藤田は駒大時代に箱根駅伝で活躍し、ともにマラソンの日本学生最高記録(当時)をマークした経験を持つ。2時間9分30秒を切って日本選手のトップとなれば内定が決まる2月18日の東京マラソンなどとは違って、「自動内定」はないものの、好記録で優勝すれば有力な代表候補となるだけに、2人の  ◆敗戦で精神力アップ/藤田敦史   昨年12月の福岡国際では8位に終わり、世界選手権の代表内定を逃した。敗因は、3位だった1年前の福岡の教訓を生かそうと、1か月前から少しペースを抑えて調整したものの、またもや疲れが抜けきらなかったことだった。20キロ通過は2週間前の練習の時より約1分半も遅く、30キロを前に集団から脱落。「練習の全体的な見直しが必要」と痛感した。  レースが終わった晩、優勝したハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)から練習方法を聞き出した。ベルリンを今季世界最高の2時間5分56秒で制し、約2か月の間隔で臨んだ福岡でも2時間6分52秒をマークした「皇帝」は、「日本人はマラソンとなると、どうして神経質になるんだ」と話したという。  「すごい練習をしているのかと思っていたが、驚くほどではなかった。僕の方がやっているぐらい。彼らは標高の高い場所で練習しているが、走るペースはそんなに速くない。それを聞き、考えが180度変わった」  大会の3か月前から入念に準備しなければ、という固定観念を捨ててみようと思った。「いつも最も調子が良いのが、本格的な練習を始めて2か月目。もしかしたら、僕には3か月もいらないのかもしれない」。福岡後、2か月で挑む今回は、新たなスタイルを確立するための第一歩でもある。(大野展誠)  ◆力抜いた走り習得/佐藤敦之  「現役で右に出る選手はいない」と坂口泰監督が評価する潜在能力が、花開こうとしている。早大時代から期待されたが、まじめな性格があだとなり、力みすぎて才能を発揮し切れないことも多かった。だが、初の別大を前に、「肩の力を抜く感覚」をつかんだ。きっかけは、まさに“けがの功名”だ。  昨年3月のびわ湖毎日マラソンで、屈辱的な途中棄権。質の高い練習を求めるあまり、肉体的、精神的にたまった疲労が重くのしかかっていた。体調が戻らないまま参加した夏合宿。それが、疲れのためか、余分な力が抜けた状態で走れていた。「これでいいんじゃないか」。思いがけない発見だった。  昨年11月の駅伝で上体をリラックスさせた走りを試すと、坂口監督も「それだよ」。元日の全日本実業団駅伝で6人抜きの快走を演じ、優勝の立役者になった。時折、両腕をだらりと下ろして緊張を解くなどして、「自分で緊張をコントロールできるようになった」。  目標は、自己ベスト(2時間8分36秒)を上回る2時間8分台前半。そして03年パリ大会に続く2度目の世界陸上の切符だ。「走りの『動』と『静』のうち、『静』の部分に目覚めた」という大器が、別大でどんな走りを見せてくれるか。(佐藤謙治)