予選を終えた国母は首をかしげた。「壁が立っているんですよね……」。ほかの国際大会に比べ、パイプの壁が切り立っており、ジャンプが「はね返る」感じになるのだという。実際、多くの選手が感触をつかめず、転倒を繰り返した。  迎えた決勝。国母は柔軟な対応力を見せた。“はね返る壁”を利用し、本来、予定になかった後方縦回転にひねりを加えたジャンプにトライ。試合で初めて披露する大技を成功させ、勝負を決めた。  前日から風邪をひいており、「体が全く動かなかった」と言う。それでも、終わってみれば、貫録すら感じさせる内容で快勝。トリノ五輪で実力を出せず、予選落ちしたころの、線の細さが消えていた。  今季、世界選手権で日本人初の2位に入るなど、進化を続ける日本のエース。試合後、「金メダルをとらないといけないという気持ちがあった」と語った横顔が、18歳の高校生とは思えないほど凛々(りり)しかった。(平野和彦)  写真=スノーボード・ハーフパイプ男子で優勝した国母(ロイター)